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「なんで僕がお前と仲良く帰らなければならないんだよ」
「だからアタシの勝手でしょ。さ、行きましょう」
言いつつ、優理花は僕の手を強引に引っ張った。仕方ない、という表情の僕は、どこか嬉しそうで間抜けな顔もしていたと思う。
「おいおい、見せつけてくれるね、お二人さん。今からデートか?」
古臭い煽り文句でからかうクラスメートに対しても、優理花は笑顔で応えた。
「へへぇ。羨ましいでしょ?デートの邪魔しないでね」
優理花に大人の対応をされ、冷やかしていた奴らは、ただ黙るしかなかった。
教室を出たところで、僕は堪らず捕まれている手を振りほどいた。
「やめろ、恥ずかしいだろ」
「あらぁ、照れてるの?」
「て!?て、照れるとか、そ、そういうのじゃねーよ!!」
一瞬で僕の顔は熟れた林檎のように真っ赤になった。
優理花は昔からこうだ。可愛いくせに、どんな噂もどんな陰口も歯牙にもかけず、跳ね返すパワーがある。それも含めて彼女の魅力になっている。
だから、優理花に彼氏の1人もいないのが、不思議でならない。
多くの男子生徒から告白はされているみたいだが、全て撃沈している。
皆に平等に優しい優理花は、1人のものにはならないのだろう。だから、僕も勘違いして告白するなどという愚行はしない。
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