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そんなことを考えていると、ドアの開く音とシャンプーの香りが漂ってきて、アキが風呂から出てきたらしい。
すると、ふいに肩に重みと風呂上がりの体温を感じ、アキが抱き付いているのが分かった。
「んー?どうした?アキって病気になるとすごい甘えたになるよな?」
食器を洗いながら後ろのアキに言うと、アキはその言葉を肯定するように更にギュッと抱き付いてくる。
「…今日は学校休んだんだ。今日までくらい甘えてもいいだろ?」
擦り寄るように動き、そう言うアキに俺は小さく笑い、アキがしたいようにさせておく。
しかし急に、俺の首に冷たい水が垂れてきて、俺は情けない叫び声を上げた。
アキの方を振り向くと原因はすぐ分かり、アキの髪から滴る雫を睨んだ。
「アキまた髪乾かしてないのかよ!?だから風邪ひくんだぞ!」
そう捲し立て、抱き付いているアキを引き剥がしてソファーの前に座らせた。
俺はさらにバスタオルを持ってきてソファーに座り、目の前のアキの頭をガシガシと拭いてやる。
「ちょ、カナもうちょっと優しく…。」
「折角風邪が治ったのに、また風邪ひこうとする人なんて知りませーん。」
そう言うと、アキは少し笑いながら「悪かったって。」と言ってきて、その言葉を聞いて動かす手を優しくした。
「もう、アキっていつもはすごい頼りになってお兄ちゃんみたいなのに、たまに手のかかる弟みたいだよ。」
「たまにはいいだろ。」
俺の方を振り向き、タオルの隙間から見上げてくるアキの視線に、俺はまいったと言うように笑った。
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