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「しょうがないから、今日は甘やかしてやるよ。」
苦笑しながら俺が言うと、アキは目を細めて笑った。
「なぁー、そういえば今日棗が変なこと言ってさ。」
アキの髪も乾かし終え、ソファーでダラダラとテレビを見ていたが、俺は思い出した今日のことをそのまま口に出す。
「変なこと?」
「そう、楓ちゃんが俺のこと好きだって言い出してさぁ。楓ちゃん走って教室から出てっちゃうし。」
朝のことを思い出して俺は顔をしかめる。
楓ちゃんも顔を真っ赤にして怒るなら、違うとはっきり言っていけばいいのに。
「あんなに目の敵にされてるのに、棗の頭の中が全くわからん!」
「俺としてはカナの頭の中の方が分かんないけどな。
…まぁ気付かない方が俺には好都合か。」
「ん?なに?」
アキが小さく呟いたため聞き取れず、聞き返すが「なんでもない。」としかアキは返さず、溜息を吐く。
「俺のこと好きな変人なんて水月くらいだぞ~?……ははっ、泣けてきた。」
「はいはい、泣かない。それに変人は他にもいるかもだぞ?」
「他って誰だよ?」
「……俺とか。」
真面目な顔で答えるアキを暫く目をパチパチさせながら見つめ、すぐに盛大に吹き出す。
「ぷははっ!なんだよそれ?アキのは幼馴染みの好きだろー?」
こんなイケメンに違う意味でも好きと言われたら、きっと他のクラスのやつらは鼻血を出して倒れるだろうな、と考えて更に笑いが込み上げる。
そしてその時ハッと気付き、俺は真剣な表情をしてアキを見上げた。
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