#00 プロローグ

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桜舞い散る4月。 暖かな陽射しに目を細め、中庭の桜の樹の下に寝そべる少年が一人。 桜の間から見える空は快晴。こんな日は昼寝に限るとひとりごち、少年は紫がかった瞳を隠すように目蓋を閉じた。 桜の下で穏やかな寝息を立てる少年の容姿は中性的ながら、これから成長するであろう凛々しさも漂い、状況も相まってまるで絵画のように神秘的な空間がつくられていた。 ……キーンコーンカーンコーン 遠くで始業を告げるチャイムが鳴り響く。 本日は新学年が始まった初日。 少年、八神 奏多(やがみ かなた)の高校生活2回目の春は、見事な遅刻からの幕開けだった。 .
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