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「……なんですか香坂先輩。あなたまで神楽先輩みたいに邪魔するんですか?」
引き離してくれた手の主は棗で、水月に鋭い視線を受けてへらっと笑った。
「まぁ、友達が締め付けられとんのを見逃せやんし、アッキーが休みの間にカナちゃんに何かあったらアッキーに怒られてまうしなぁ。」
へらへら笑いながらそう言う棗を、水月は暫くの間睨んでいたが、小さく溜息を吐いてから教室の出口の方に向かう。
「…香坂先輩はどうにも喧嘩しづらいので今日は帰ります。
……言っときますけど、奏多先輩は渡しませんよ?」
身体は出口の方に向けたまま、水月は俺たちの方を振り返り、そう言葉を残すとそのまま教室から出て行った。
そんな水月の姿を俺は呆然と見つめ、その横で棗は「おっかないなぁ。」と言いながら手を振っていた。
「…棗すごいな。あの水月があんなあっさり引き下がるとは…。」
暫くしてから俺は感心したように言葉を漏らした。
あんな水月の姿を見たのは初めてだ。
「別にすごないって。1年生なんて気分屋やから、今日はそういう気分やったんちゃう?」
棗は本当に何も思っていないように言い、手を振った。
「うーん、俺に迫力がないのかなー。極道の息子なんだから、もっと漢って感じの迫力欲しいんだけどなぁ。」
「カナちゃんはそのままでいいって!カナちゃんにまさやんみたいな迫力あったら嫌やもん!」
自分の頬を触りながら呟く俺の姿を見て、棗は本当に面白そうに笑って突っ込む。
まぁ確かに…俺が政宗みたいになるのは想像できないな…。
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