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9.
食事を終えると、杏梨達三人は店の外へと出た。
鹿之助はふと、腕時計を見やると、時計は午後四時を過ぎていた。
外はもうそろそろ日が落ちる頃だろう。
杏梨「じゃあ私は、そろそろ……」
携帯を見やりながら杏梨は呟く。
千絵「ああ、そうね。もうこんな時間か。楽しい事はすぐに終わっちゃうわよねぇ」
ケラケラと笑いながら、千絵は呟く様に言う。そしてその顔は、とても輝くような優しい顔だった。
それを見た杏梨は、また突然と俯き出す。
そして、
杏梨「……めんね」
千絵「えっ……?」
小さな声で全然聞き取れなかった。
杏梨「……ご……めん……ね……っ」
その声には、嗚咽が混じっていた。
そして、茶髪の少女からポトリと、小さな雫が頬を伝って地面へと落ちていく。
鹿之助「っ……」
千絵「あん……り……?」
突然の事で、さすがの千絵も、少女の様子に唖然としていた。
千絵「どうしたのよ、杏梨!?何で謝るのよ」
杏梨「だって……、だって私のせいで、ひッぐ……えぐ!」
嗚咽は止まらなかった。
当然、何を言ってるのかも分からない。
しかし、千絵と鹿之助はこの涙の理由にようやく勘づく。
だから、だから千絵はゆっくりと、小さな少女の体を抱き締める。
千絵「いいのよ、もう。そんな事気にしてたの?」
杏梨「だって……、だって私っ!私のせいで……ッ……、いつも二人は悲しい顔をするんだもん!!それで……っ!いつも元気付けてくれる!今日だって!」
少女は、ポタポタと、小さな雫を落としていく。
ずっと、ずっと我慢してきた。
当然だ。
八年前のあの日、突然と大切な人を一気に亡くしたのだ。この少女は、幼い頃からずっと、寂しさを我慢していたのだ。
孤独だった。
寂しかった。
そして、死にたかった……。
しかし、死ねなかったのは、幼い時の頃。
コード・エリアの学校に転入した時に、とある少年・少女と出会ったからだ。その二人は、この少女の気持ちを理解してくれた。辛さを知ってくれた。
だから、少女の中にあった闇を、取り払ってくれた……。
杏梨にとってこの二人は、とてもかけがえのない、家族同然の親友である。
だからこそ、この二人に迷惑をかけたくなかった。
でも、できなかった。
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