第一章~来訪、刀を持つ少年~

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杏梨は、悔しくて涙を出している。 二人はいつも甘えてばっかりで。そのくせ自分は二人には何もしてあげられていない。 悲しい気持ちは、一緒だというのに。 なのに……。 なのに……だ……。 千絵は、ぎゅっ!と、少女の体を次は強く抱き締め、 千絵「そんな事ないわよ」 そして、また優しく、笑顔で千絵は返す。 とても、温かかった。 あの時も、幼かった千絵に、こうやって強く抱き締められた。あの時もとても心が温かく感じた。辛さや悲しみが、一気に抜けた感じがした。 千絵「逆に私達が元気付けられるっての……。あんたの笑顔に、いつも助けられてるのが私達ってこと自覚がなかった?」 杏梨「えっ……?」 そんな事、微塵も思った事がなかった。 その言葉が、本当なのかどうか、疑いたいぐらいだった。 しかし、千絵の顔を見て、疑う事ができなかった。その少女もまた、小さな雫を流していたからだ。泣きぼくろのあるその少女の涙は、とても美しかった。 鹿之助「杏梨、これは本当だ。俺達の悲しみは、お前の笑顔によって救われてるんだぞ」 少年はそう言い、照れる様に笑って返す。 杏梨「鹿……君……」 涙が止まらなかった。 嬉しかったからだ。 孤独じゃないという事が分かったから。 安堵感が止まらなかった。 杏梨「うぅぅ……っ……ふぇぇぇぇぇッッ!!」 杏梨もまた、千絵を強く抱き締める。 よく見るとその二人の光景は、まるで姉妹の様だった。 千絵が姉で、杏梨が妹。 二人はそのまま、お互いの気持ちを感じ取りながら、泣きじゃくった。
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