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10.
デパートの屋上で、とある二人の少女はベンチに座っていた。
さっきので泣き疲れ、少し休憩をとっているのだ。
外はすっかり夕焼け。
西日が沈みかけた空は真っ赤に染まって、浮かんだ雲すらも朱に交わっていた。
時間はもうすぐ六時を回ろうとしていた。
千絵「大丈夫、杏梨?」
杏梨「うん、もう大丈夫」
目の周りは赤くなっているが、少女は元気を取り戻していた。心の奥底にあった闇がなくなったからだ。
その時、少年は二本の缶ジュースを手に少女達に駆け寄る。
鹿之助「ほらよ」
そう言い、二人にジュースを手渡す。
杏梨「ありがとう」
千絵「サンキュー、鹿之助」
二人はジュースを手に取り、一気に飲み干す。
相当喉が渇いていたのだろう。
千絵「ふぅ、飲んだ飲んだ!」
鹿之助「全く、元気だなお前は」
千絵「そりゃあそうよ。それにこの子の心境を聞けたしね?」
そう言い、茶髪の少女の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。杏梨は照れくさそうに顔をまた赤くする。
千絵は杏梨の頭から手を離し、ベンチから元気よく立ち上がる。
千絵「さてっと!帰りますか!」
杏梨「うん。でも……」
鹿之助「なら、俺達も行っていいか?墓参りに」
杏梨「えっ、うん。でも鹿君、あそこの時は一人にさしてくれって……」
鹿之助「……」
杏梨「ごっ、ごめん!変な事聞いて!」
鹿之助「いや、気にするな。でも、今ならお前達と行ける。悲しみを共有できるまでの大切な仲になったんだ。それに、俺達の悲しみはお前と一緒って、さっき言ったろ?」
その声は、力強かった。
その声は、温かった。
その声は、とても頼もしかった。
そして何より、
その声は、優しかった。
少年は、告げる。
鹿之助「だから、もう大丈夫だ。全く、みっともねぇな。そんな事で泣くなよな」
頬を赤らめ、ポリポリと頭を掻きながら、少年は言う。
それに対し、杏梨は笑顔で、
杏梨「うん。ありがとう、鹿君……」
その笑顔は、とても美しかった。
夕陽をバックに、少女の微笑む姿に思わず鹿之助はドキッ!!となる。
千絵「おや~、しかのすけぇ~?何で顔が赤くなってるのかなぁー??」
鹿之助「はっ、はぁっっ!!?なに言ってんだお前は!?」
千絵「え~、だってぇ?さっきぃ?」
鹿之助「ばッ、馬鹿言うな!!ほらッ、早く行くぞ!!」
ズカズカと、少年はぎこちない早歩きをしながら、屋上から出る。
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