1人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
序章~炎の中の少年~
それは、突然だった。
東京に大規模な大爆発が起きた。
原因は不明。
東京の街は、炎と化し、『私』はその中で目を覚ました。こんな状況で、五体満足で生きてられているのが、不思議でしょうがなかった。
本当に、奇跡としか言いようがなかった。
私は、体を起こし、辺りを見渡す。
ここがどこなのか分からない……。
外であることは確か。……というより、何故私はこんな所にいるのだろう?
記憶が曖昧になっている。思い出そうとすると頭が痛くなる。
何でだろう……。
そんな事より、お父さんと、お母さんは?
もう一度、辺りを見回すが、誰もいなかった。
今更だが、突然怖くなって涙が出てきた。
私はここで、この場所で、誰にも見つかる事なく、死んでいくのだろうか?
そう思ってしまい、涙が止まらなかった。
父親と母親を、叫んで呼ぶが、当然そんなものでやって来るとは思えない。
しかし、それでも、私は叫ばずにはいられなかった。
その時だった。
遠くから爆発の音が耳に入る。
私はそれに怯え、その場に蹲る。
もう、イヤだ……。私が何をしたの?
帰りたい……。お父さんと、お母さんに会いたい!
炎の中で、私は嘆く。
歯をガリリ……ッ!!と、軋ませる様に噛み締める。
しかし、絶望に打ちひしがれている、その直後の出来事だった。
こっちに来い!!と、炎の中から少年の様な声が、私の耳に入る。
一瞬、幻聴かと思ったが、何度も呼び掛けているので、私は声のした方向に進む。
怖いが、ここにいるよりはマシだと思い、私は一歩、一歩と歩々を進める。
来た所は、何もない荒れ地だった。
ビルが倒壊した瓦礫の数々は周辺に転がっているが、さっきの場所よりかは安全地帯だった。
しかし、誰もいなかった。
確かに少年の声のした方向はここで合っている。
その時、また遠くから爆音が鳴り響く。
私はふいにその方向を振り向く。
振り向くとその方向の一帯は、何もかもが炎に包まれていた。
その光景は、まさに地獄絵図と言ってもいい。
そしてその一帯からは結構離れているというのに、熱気がここからでも伝わってきていた。
とても近付けるような場所ではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!