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第一章~来訪、刀を持つ少年~
1.
とある学生寮の一室。
一人の少女はベッドから起き上がる。
荒い息をたてながら。
"椎名杏梨"(しいなあんり)は今日も、あの夢を見て目を覚ました。
杏梨(また……あの夢)
杏梨は片手で頭を抱え、心の中で呟く。
杏梨「ほんと、何か最近見るのが多くなっている様な気がする」
時計を見てみる。
針は七時三○分を指していた。
とにかく、起きるにはちょうどいい時間帯だった。
ショートヘアーの茶髪の少女は、ベッドから起き上がり、学校の支度をする。
朝は食パンと目玉焼きを食べながら、テレビのニュースを見るのがこの少女の日課である。
『新商品はこれ!肌などがとてつもなくツヤツヤになるそうです!価格はたったの一パックで一二〇〇円!』
杏梨(そうやって期待を上がらせてるけど、本当に売れてるのかなぁ)
キャベツをシャリシャリと食べながら、また心の中で次は不満気に呟く。
最近は、こういう新商品の紹介が多い。
杏梨「でも、平和っていう証拠だよね」
杏梨はそろそろ学校に行こうと思い、テレビの電源を消そうとしたその直後だった。
『続いてのニュースです。『東京』でのあの大規模な爆発が起きて、ちょうど八年が経ちました。現在でも、まだ原因は解明されていません』
杏梨「っ……」
そう、あの大災害が起きて、八年が経とうとしている。
東京は半壊状態となり、多くの犠牲者を出した。
東京の大規模な爆発、別名『アンノウン・バースト』。
彼女も、その被害者の一人である。
それのせいで、椎名杏梨の人生は大きく変わった。
両親を失い、兄も失ってしまったあの日、彼女は四歳にして、あまりにも受け難い現実を目の当たりにしてしまった。
家族を失ってからは、茨城の親戚に引き取られたが、孤独なのには変わりはなかった。
杏梨はいつも一人だった。
親戚の人達はいつも彼女を気にかけていたが、彼女の心が癒される事はなかった。
杏梨「……」
彼女は無言でテレビの電源を消し、学校の支度へと急ぐ。
よく見れば時計は八時を指していた。
杏梨(はぁー。イヤなニュースを見ちゃった。もしかしたら最近また考えすぎちゃってるからあの夢を見るようになったのかな?)
東京が壊滅した直後の夢を、彼女はまた最近になって見るようになった。
杏梨は星のヘアピンを付け、よしっ!と意気込んでから、玄関へと向かう。
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