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3.
『能力定期試験』と言っても、只の筆記試験とかではない。
身体測定と同じ、体力テストで能力レベルを測定する。
例えば『空間移動』(テレポート)ならば、砲丸投げの様に重さ一二〇キロの布袋をどこまで飛ばせるかでレベルが認定される。
ただし、ただの砲丸投げとは異なり、単に飛ばすのではなく正確なポイントへと落とすという要素も加わってきたりする。
「はぁー。絶賛大不調だ」
少し暑くなってきた午後の校庭の真ん中で、体育用のランニングと短パンを着た少年は遠く離れた校舎を眺めつつ、暑さにまいった口調で呟く。
「鹿くーん!」
その時、後ろから聞き慣れた少女の声が耳に入る。
そしてその声を聞き、"殿谷鹿之助"(とのやしかのすけ)は、少しドキッ!となる。
化粧がいらない程度に整った綺麗な顔立ちをしたショートヘアーの茶髪の少女は、ぶんぶん!と手を振り上げながら駆け寄ってくる。
隣には泣きぼくろのある少女もいた。
そしてその少女は二人を交互に見ながら、ケラケラとまるでからかう様に口を歪めていた。
鹿之助「杏梨、千絵、お前達ももう終わったんだな」
二人が手にしている用紙を見て鹿之助は言う。
その用紙にはテストの結果、つまりレベルの判別が書かれている。
杏梨「はぁーあ、やっぱり全然駄目だったよ。同じく『コード:2』。私ってばこういうの全然だね」
千絵「私も、同じく『コード:3』。結果は一緒」
ヒラヒラと用紙を見せながら、二人は深く溜め息をする。
鹿之助「俺も変わらないな。千絵と同じく『コード・3』のままだ」
千絵「はぁー、この暑さだと力の精度が下がるのよねぇ」
手をパタパタと顔に扇ぎながら、素っ気ない調子で呟く。
能力者は、精神状態によって、能力値が激変する事もある。
確かに、最初から限界ギリギリに近い注文を、この暑さのなかでこなせと言われても精度が落ちるのは当たり前だろう。
千絵(まぁでも、そこで言い訳を考えるから、いつまで経っても『コード・4』になれないのよねぇ)
と、千絵は自嘲気な重たい溜め息をついた直後だった。
ゴドン!!と。
校舎と言わず、体育館と言わず、校庭と言わず、敷地のあらゆる物が突然の爆破振動に、ぎしぎしみしみしと揺さぶられた。
ここからでは校舎が壁になって見えないが、その裏手にはプールがある。
爆発音はそこから。
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