真実は一つじゃない

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■真実は一つじゃない   「認知バイアス」という言葉がありまして。 私はこの言葉が好きです。 バイアスとは「歪み」の事です。   同じ場所で同じ体験をした人間は、同じ真実に触れただろうか。 うん、違いますね。   鈴木さん語る 「車がふらっとしてさ、電信柱にドーンと衝突したの!  俺すぐに佐藤と駆けつけてさ、窓をノックしたのさ!」   佐藤さん語る 「なんか車がふらついていると思ったら、急にハンドル切って。  電柱にぶつかったんだよね。鈴木と驚いてしばらく見てたんだけど、  運転手が出てこないから一緒に見に行ったのさ。」   それがどうしたかというと、それが認知の歪み。 鈴木さんは「衝突した」 佐藤さんは「ぶつかった」 鈴木さんは「すぐに駆けつけ」 佐藤さんは「しばらく見てた」 ただの表現の選択の違いに思えるかもしれないけど、 鈴木さんと佐藤さんでは 記憶の中の車のスピードが違う。 衝突後の時間の長さが違う。   結果、お互いに真実が違う。   これは誤解じゃない。 佐藤さんからは鈴木さんが間違ってると思うかもしれない。 鈴木さんからは佐藤さんが間違ってると思うかもしれない。   どちらも間違っていない。 だって、真実は一つじゃないんだ。
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