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「久しぶりだねエニス」
エニスの登場により机の上の教材と睨めっこをしていたアリスは振り返った。
何故か背筋を伸ばし、毅然としたお姉さんらしい口調で、
「こらエニス!!扉を開ける時はノックをしなさい。それと鋼一は私と〝勉強中″よ!!」
「す、すいませんお姉様……」
アリスの言葉にエニスはしゅん、と肩を落とした。
ここであえて宿題と言わず勉強と言うところがアリスらしいなと鋼一は苦笑いを浮かべる。
姉の威厳を守る為に言っているであろうことだが、後できっと宿題をしている事がバレてしまうのはもう必然かもしれない。
そして、しょんぼりしながら謝るエニスが可愛い……なんて思っていることは内緒だ。
アリスは終わらない強敵のせいで数段カリカリしていた。
(……このまま本当に宿題が終わらないのはまずい、かな……)
それは非常にまずかった。特に彼女が宿題をしてこないのは、だ。
アリスはときおり鋼一をちらちらと見て『宿題見せてくれないかなー』などと意思を込めた視線を送っている。
キリギリス奥義『他力本願』である。いつもなら鋼一の防御技『情けは人の為ならず』で断るのだが、今回はそれを言っている程余裕もない。
(しょうがないか……)
鋼一は溜息をつき、自分のバックから春休みの宿題を取り出した。
爛々と目を輝かせて餌を待つ仔犬の様なアリスに鉄拳でもお見舞いしたくなるが、諦める。
「このままやっても間に合わないから、今回だけ俺のを見せるよ」
「ほんと!?こーいち!!」
「……本当だよ」
鋼一の一言に、今まで眉間に皺の寄っていたアリスの顔がぱぁっ、と明るくなった。
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