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2X28年 7月28日
『おはようございます。起床の時間です。今日も良い1日を。』
部屋の中に柔らかな声のアナウンスが流れ、辺り一面に光が差し込み、美しい森林の中の景色と滝、白いテラスが現れる。
「もう朝か...。」
真っ白なベッドから体を起こすと心地よい風が髪をなで、木々と土の匂いのする爽やかな空気を鼻に吸い込む。
するとまた部屋にアナウンスが流れる。
『お風呂と今日のお洋服の準備がととのいました。お風呂に入る前に朝食の設定を告げ、食事の準備ができるまで、身支度をお整え下さい。』
大自然の中にこのようなアナウンスが流れるというのはなんと珍妙な光景だろう。
しかし、これはここでは当たり前の光景である。
ホログラムの技術や様々な体感装置が一般化したこの時代では、誰でも好きな物を見、快適な世界で生きることが出来る。
これはイマジネーションテクノロジーと呼ばれ、今の人類には欠かせないテクノロジー産業の一角となっている。
このシステムのおかげで、人は様々なことを体感できる。
例えば、小さく、質素な家が広い洋館に見えたり、水のない場所で泳ぎ回る感覚を味わって見たり、周りの嫌な人間の見た目を可愛い動物に変えるなどができるのだ。
このシステムは始めは身体障害者のために作られた物であったが、脳の一部以外は本人の遺伝子で殆ど再生出来る現代に於いては一般人の精神安定システムとして多いに役立っている。
このシステムのお陰で、精神病を発症する人間はごく少数になった。
この時代では様々な物が信じられないほど便利だ。
しかし、この時代の中で主人公の三島麗奈(みしま れな)はかなり変わった存在であった。
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