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一般に普及しているのは、せいぜい液体以外の物質専用の3.5キロまでの転移装置だ。
意識転移装置といった、現場の人体機能転移ロボットに自分の意識とホログラムの情報を送り、一瞬で目的地へ行き、その場で活動をすることができるという物は、一般に普及しているが、手先が不器用な人間からすれば、使いやすい体として機能するが、麗奈にとっては細かい作業のしずらい少々面倒な体であった。
車に乗るとナビゲーションシステムが起動し、行き先情報を尋ねてくる。
ただ一言「会社へ。」と言えば、以前登録された情報を頼りにその場へと車のAAD(オールオートドライブ)システムが連れて行ってくれる。自然の中の空が割れ、車が浮上したと思うと、様々なデザインのビルが立ち並ぶ景観が現れ、その景観の中に引かれた車道を、車が滑るように走っていく。
この景観もすぐに違う物へと変わる、時期や個々人、企業の設定により、様々な物へと変わる。桜並木や金木犀、クリスマスバージョンやギリシア建築など時期や物の様々なバリエーションがあるのだ。
最早視覚による記憶など不可能である。
麗奈は車の中で会議用の化粧と衣服のホログラムを被ると、お気に入りのBGMを聞きながらゆったりと目を閉じた。
麗奈にとっては、目を閉じている時が一番落ち着く時間だった。
ただこの瞬間だけが何も見ていない代わりに全てが現実に一番近い気がするのだ。
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