最終章――仁

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「何を言われても平気だった。  何をされても耐えられた。  ……だって、いつも……  仁さんが……居てくれたから」 怒っても、拗ねても。 化粧が崩れるほど、泣いたって。 柊香は、いつも輝いている。 君の笑顔も泣き顔も、 いつでも俺には眩しくて。 自分のものなのに、煌びやかで。 どこか近付けないような神々しさがあった。 「……でも、もう居ない。  ここに……居てくれない。  知らないのに。  分かんないのに。  ……覚えてないのに」 居るよ、居るんだ。 俺はここに居る。 柊香の隣以外に、 俺の居場所なんてある訳ねぇだろうが。 どうしたら、分かってもらえる? 「仁さんが居なかった人生なんか、  覚えてない。  そんなの、あたしの人生じゃない。  あなたが居なかったら、  ……あたしですらない!!」
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