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手を伸ばす、という感覚は覚えている。
なのに――
俺には、体がないんだよ。
伸ばすものがない。
柊香。俺のカワイイ柊香。
触れたいのに。
こんなに抱き締めたいと思ってるのに。
どうしてだろう。どうしてなんだ?
俺は、こんなにもそばにいるのに。
これ以上ないくらい、近くにいるのに。
「淋しいの。
だってもう、抱き締めてくれないもの」
ゴメン。ゴメンな、柊香。
伸ばしたって届かないが、
そもそもその手が存在しないんだ。
「抱き締めてくれないのは。
きっと。
抱き締める必要がないからですよ」
必要ない? 本当に?
だったらなんで。
柊香はずっと、泣いているんだ。
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