最終章――仁

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「これ以上ないくらい、そばにいます。  体や時間という制約がない分、  心が重なる距離にいられるから」 心が――重なる距離? 「お義母さんの中に、  お義父さんは居るはずです」 ただの綺麗事というだけでなく。 美映ちゃんはそう付け足した。 「涙が出るのは、淋しいのは。  愛してるなら、当たり前です。  幸せなら、当然のことです」 ――あぁ、そうか。 何かがストンと、俺の中に落っこちた。 ――幸せだったんだ。 毎日幸せで、幸せで。 俺は本当に、幸せだったから。 多分、あっという間に。 一生分の幸せを使っちまったんだ。
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