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――屍体はみな腐爛して蛆が湧き、
堪らなく臭い
――それでいて水晶のような液をタラタラと垂らしている
――桜の根は貪婪な蛸のように
それを抱きかかえ
いそぎんちゃくの食糸のような毛根を聚めて
その液体を吸っている
俺の希望を、夢を――幸せを。
俺の墓に立っている桜は、
すべて吸い上げているはずだから。
過去の記憶も、想いも。全てを。
なぁ、爛漫と咲き乱れている桜の樹。
お前は知っているんだろう。
だから。
俺の代わりに――伝えてくれよ。
「綺麗ね」
お前が、そんなにも美しいのは。
「美しすぎて、怖いくらい……」
俺の愛を飲み込んでいるせいなのだと。
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