最終章――仁

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****************** 「仁さん、仁さん」 俺を想って。 柊香はずっと泣いていた。 口にする俺の名前は。 彼女にとって。 「愛してる」 と、同義だから。 嬉しくて、嬉しくて。 幸せで、幸せで。 ――何があんな花弁を作り   何があんな蕊(シベ)を作っているのか   俺は毛根の吸いあげる水晶のような液が   静かな行列を作って   維管束のなかを夢のようにあがってゆくのが見えるようだ―― 風に舞う、桜の花びらで。 俺の血肉を与えた花弁で。 ただただ、柊香を包んでいた。
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