第一章――柊香

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彼のことを。 母は「ならず者」と呼び、 父は「成り上がり」と称した。 古河(フルカワ)柊香(シュウカ)個人にとっては、 「話が上手なお兄さん」だ。 とにかく、彼は話し上手だった。 一度耳を傾けてしまったら、 最後まで聞かずにはいられない。 だってだって、気になるんだもの。 あたしにとって、 渡瀬(ワタセ)仁(ジン)とはそういう男。 たまにパーティーで出逢う、 面白いお兄さんだった。 「よく話すようになったのは、  親友の恋がきっかけだったの」 美映ちゃんはニコニコと、 あたしの言葉を待っている。 仁さんの話が聞きたいと言ったのは、 お茶を用意してくれた彼女だ。
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