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彼のことを。
母は「ならず者」と呼び、
父は「成り上がり」と称した。
古河(フルカワ)柊香(シュウカ)個人にとっては、
「話が上手なお兄さん」だ。
とにかく、彼は話し上手だった。
一度耳を傾けてしまったら、
最後まで聞かずにはいられない。
だってだって、気になるんだもの。
あたしにとって、
渡瀬(ワタセ)仁(ジン)とはそういう男。
たまにパーティーで出逢う、
面白いお兄さんだった。
「よく話すようになったのは、
親友の恋がきっかけだったの」
美映ちゃんはニコニコと、
あたしの言葉を待っている。
仁さんの話が聞きたいと言ったのは、
お茶を用意してくれた彼女だ。
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