第一章――柊香

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千賀ちゃんが恋をしたのは、 『Career Holdings』の御曹司、 松崎(マツザキ)万寿(マスミ)。 彼はあたしたちより6歳年上の24歳。 高校卒業を目前に控えたあたしたちとは全然違って、ずっとずっと大人だった。 『ローマの休日』のグレゴリー・ペックみたいな精悍で穏やかな顔付き。 意外とがっしりした体格で、 頼り甲斐のありそうな男の人だ。 きっと、武道で鍛えたのだろう。 いつ見ても、大勢の女性に囲まれているハンサムさん。 群がっているのは、 あたしたちより大人の女性たち。 本音を言えば、 ちっとも勝てる気がしないけれど。 でも、親友のためだもの。 どうにか隙を見つけて、 話しかけなくちゃ。 話す機会さえあれば、 上手くいくと思っていた。 あたしたちの青い春。
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