第1章 プロローグ

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2010年4月4日深夜1時 悪夢は再び訪れた。 「また…この夢……」 闇に覆われた世界。 ただあるのは、夢とは思えないほどの現実感。 「本当に誰もいないのおぉぉ!!! 奏さーん!」 だが、どんなに叫ぼうとも、その声は虚しく響くだけ。 けして、その返答は返ってこない。 〝やはり何かあるんだ… もうやだよ…引っ越そう… 起きたら引っ越すんだっ。 引っ越せば、何かが変わる!〟 まるで、極寒の地にいるかのように身を震わせる弥生。 ぷっくりとした赤い唇は紫に変わり、幼さの残る顔は悪魔の様に引きつっている。 〝まずは! この状況をなんとかしなきゃ… あの女が来る!!〟 そう考えた弥生は立ち上がり、 後ろを振り返る。 〝逃げなきゃ!!〟 と、走り出そうとしたその時! 「キャァァァァァァァァ!!!」 「えっ!?」 まるで、この世を包み込むかの様に、奏の悲鳴が聞こえてきた。 「奏さん!?」 〝まさか!…いるの!?〟 弥生は、闇雲に走り出し奏を探し始める。 「奏さーん!!奏さーん!!」 どんなに叫んでも返答もなく見つからない。 ただ、 「いやっ!やめてっ!こないでぇ!!!」 と言う奏の泣き叫ぶ声だけが辺りに響き渡っている。 〝きっと、あの女が奏さんに…〟 「ハァハァ…奏さーん! 何処にいるのっ!奏さーん!!!」 どの方向から聞こえてくるのかすらわからず、気ばかりが焦る。 〝奏さんがっ!奏さんが!!〟
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