第1章 プロローグ

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「どうしたの?」 弥生が奏に問うと申し訳なさそうに携帯を渡してきた。 「なんかぁー。あつしがかわれって…」 「あっ。はい。良いですよ?」 弥生は携帯を受け取ると、少し緊張気味に喋り出す。 「もっ…もしもし…代わりました。」 「あっ!貴女が八重樫弥生さん? 初めまして、奏の彼氏の紫藤敦(しどうあつし)です。」 「初めまして!」 想像していたより、真っ当な対応をする男性の声。 奏の印象からするに、もう少しチャラい喋り方をすると思っていた分、少し複雑な気分だ。 「ごめんね。うちの奏が… 迷惑かけてるみたいで…」 「そっ!そんなことないですよ? かなり楽しんでます。」 「そう言ってくれると助かるよ。 一晩だけど、うちの奏をよろしく頼むね。」 「いえっ!こちらこそ…。」 〝何だろう…真面目な人なのかな? でも、誠実そうでいい人っぽい。〟 そう思いながら、奏を見る。 「うぃー…。ふひひひ…」 〝あー。奏さんには、敦さんみたいなしっかりとした人がいないと駄目なのかも…〟 「ハハハ…」 フラつきながら笑う奏に、弥生は苦笑しながら、納得せざる得なかった。 「? どうしました?」 「あっ。いえ…なんでも…」 「? そうですか…。では、すいませんがもう一度、奏に代わっていただけませんか?」 「あっ。はい。」
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