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「にゃーん」
「…あ、クロ!」
背後からすり寄ってきた猫を抱き上げ、首のあたりを撫でてやる。気持ちよさそうに喉を鳴らし頬ずりしてくるクロが、僕はたまらなく愛しい。
「はい、これやるよ」
まだ新鮮な、濡れた魚をクロの前に出すと、クロは僕の手から優しくとって、食べ始めた。
僕のクロ。最初に森で出会った頃から、クロは懐こく僕に寄って、触れ合ってきた。
いつしか、僕は森に通うのが日課になっていた。
「にゃー」
「ずっと、僕と一緒にいてね」
それは、父が死に、母も厳しかった僕にとっての、家族愛のようなものだったのかもしれない。
クロの耳のところを撫でると、クロは満足した顔をして、しゃがむ僕の膝に乗った。
さわさわ、と森が音を立てる。鳥のさえずりが木々の合間に響いて、心地よい。
僕の初恋の相手は---黒猫、だった。
*
「ごめん、クロ。もう君とは会えないんだ」
*
「寄るなバケモノ!」
「あっちに行け! 二度と来るな!」
*
「--------魔女め!」
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