0:プロローグ

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「にゃーん」 「…あ、クロ!」  背後からすり寄ってきた猫を抱き上げ、首のあたりを撫でてやる。気持ちよさそうに喉を鳴らし頬ずりしてくるクロが、僕はたまらなく愛しい。 「はい、これやるよ」  まだ新鮮な、濡れた魚をクロの前に出すと、クロは僕の手から優しくとって、食べ始めた。  僕のクロ。最初に森で出会った頃から、クロは懐こく僕に寄って、触れ合ってきた。  いつしか、僕は森に通うのが日課になっていた。 「にゃー」 「ずっと、僕と一緒にいてね」  それは、父が死に、母も厳しかった僕にとっての、家族愛のようなものだったのかもしれない。  クロの耳のところを撫でると、クロは満足した顔をして、しゃがむ僕の膝に乗った。  さわさわ、と森が音を立てる。鳥のさえずりが木々の合間に響いて、心地よい。  僕の初恋の相手は---黒猫、だった。       * 「ごめん、クロ。もう君とは会えないんだ」       * 「寄るなバケモノ!」 「あっちに行け! 二度と来るな!」       * 「--------魔女め!」
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