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「お金持ち」という人種が、この世に本当にいるのだという事を、初めてこの目で確かめた気がする。
俊太郎先生のマンションは、まず、入り口からして違った。
私の背の二倍もありそうな、ガラスばりの玄関。
磨き上げらえたガラスはぴかぴかに透明で、まるで、そこに何もないみたいだ。
誰もいないのに眩しい照明がさがっている。
高価ですよといわんばかりの大理石張りのポーチがあって、白いソファーが幾つか置かれた休憩スペースがある。
……でも、その手前に自動ドア。
入ると、赤い制服と揃いの帽子を付けた男性が、ホテルのフロントのようなカウンターの後ろから私を見て微笑んだ。
こんばんわと、挨拶されて、思わず左右を見る。
今のは間違いなく、私に挨拶したのよね?
どうしてマンションにフロントがあるんだろう。
間違ってホテルについちゃったんじゃないかと、思わず表まで戻って建物の名前を確認してきたくなる。
「こんばんわ。どちらにご用事ですか? ご案内いたしますよ」
戸惑っていますと顔に書いてあったみたい。
初老のフロントの男性が、笑顔で優しく言い直してくれた。
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