1.俊太郎先生と「椿」

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 スポーツジム。プール。 いや、もぅ……もはや絶句です。  なんだか、いきなり先生に逢いたくなくなってきた。せめて、着がえてから来るんだった。靴だって、ぺたんこパンプス。  化粧も汗でほとんど落ちてるし。  私の考えている事が相当表情に出ていたんだろう。  内村さんは、もう可笑しくてたまらないという風な笑顔になりながら、エレベーターを呼んでくれた。 **** 「エレベーターは、お住まいの方が鍵かスイッチを入れて下さらないと、当該階まで動かないんですよ」  エレベーターのボタンの下にある鍵口を指で軽く叩いて、内村さんが教えてくれる。  きっと、エレベーターにたどり着くまでに、内庭を見せるように、何折れかの廊下を歩かされるのも、約束していない客が急に押しかけた時、止められるように、だ。  何故だかそんな気がする。 「相当セキュリティが厳しいんですね」  エレベーターが開くと同時に、小さな箱の中に明かりがつく。内村さんが先に入って、私を招いた。 「そういうものを必要とする方もおいでですので」  たとえば、ヤクザの大親分とか? そういえば、さっきの廊下なんか、銃撃戦とか映画ですると絵になりそうだった。
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