1、消失学園

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――…翌朝。あたしは早起きして礼拝堂を訪ねた。大きな扉をそろそろと開ける。 長椅子の最前列に座っていた神父様がバッと振り向いた。 一瞬驚いた顔をしたが、すぐにホッとしたように表情が変わった。 「……篠宮さんですか。どうしました? こんな朝早くに」 神父様は笑ってみせるが、心なしか笑顔がぎこちない。 「いえ。驚かせてしまったみたいで……」 神父様の様子も気になったが、あたしはそれよりも気になっていることを神父様に尋ねた。 「あの……愛美ちゃんっていう子、知りませんか? 昨日ここに来ていたみたいで」 神父様は少し考えた後で口を開いた。 「……いいえ。知りませんね」 愛美ちゃんは神父様のところに行かなかったのだろうか。 でも知らないと言われてしまったら、それ以上なんと聞けばいいかわからない。 「そう……ですか。じゃああたしはこれで」 「篠宮さん。昨日は放課後礼拝堂に来てくれるよう、お願いしていたと思うのですが―…」 神父様の言葉で、昨日掃除を頼まれていたことを思い出した。 どうして忘れてたんだろう。頼まれたのに。 「あー。すみません。昨日はあたし、えーっと……」 理由は確かにあったはずなのに、思い出せなかった。記憶に白いモヤがかかったようで出てこない。 神父様が心配そうにあたしを見ていたので、咄嗟に答える。 「体調が……悪くて」 神父様が眉をひそめた。 「どこか痛みは?」 あたしは慌てて手をパタパタと振って答えた。 「あー、いえ! 治りました。すみません」 神父様は気が抜けたように笑った。 「そうですか。じゃあ今日の放課後お願いしますね。最近掃除していないから」 (あれ?) 「でも礼拝堂の掃除は確か――…」 誰かがすると言っていた気がする。 「確か……別の女の子が最近、掃除すると言っていたような……」 神父様は首をかしげた。 「いいえ。そんな話は知りませんよ」
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