1、消失学園

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結局何も思い出せなかった。始業の時間になり、教室の自分の席につく。 机に体をもたれさせて、隣を見る。 空席。 前も空席。 後ろも……空席。 あたしの席の周りは全部空席。隣の席も、前の席も、後ろの席も誰もいない。 一学期からずっとこうだったはずなのに、どこか寒々しく感じた。 担任の先生が出欠を取る声をぼんやりと聞いた。 「――さん。和久田さん。はい。以上25名全員出席ですね」 25名全員出席。 これで全員? あたしは起き上がって、例の交換ノートをパラパラと開いた。 数日前の日付であたしの字でクラスメイトの人数に関する記述があった。 『愛美には27人って言われたけどさーやっぱり始業式の時にはもっとたくさんいたような気がするんだよねー。40人くらい』 2人の誤差。不自然な自分の周りの空席。 「……誰かいなくなってる?」 思わず声に出てしまった。 ハッとして口元を覆った時にはもう遅かった。クラスの子たちも先生もこっちをを見ていた。先生があたしに言った。 「篠宮さん? どうかしました?」 クラスの子たちの視線が刺さる。 「いえ……その、すみません。寝ぼけていたみたいで」 みんなにドッと笑われた。先生がパンパンと手を叩く。 「はいはい。静かに。授業に戻ります。篠宮さん、もう居眠りしないでね」 「すみません……」 勘違い、なのかな。だって周りのほかの子達は何も気づいていないみたい。 もし誰かいなくなっているのならもっと騒ぎになるし、何より先生が気づかないなんてありえない……よね。
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