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礼拝堂に神父様の声が響く。
聖書を片手に淡々と読み上げる声。
『――…年老いた者が賢いとは限らず、年長者が正しいことを悟るとは限らない―…』
耳に入る声が徐々に意味をなさなくなっていく。ボーッとしてきて、カクン、と頭を揺らしたら愛美に肘でつつかれた。
口ぱくで「起きて」と言っている。
(律儀だなー)
別に起こしてくれなくていいのに。小声で「ありがとう」と言うと、シッといなされた。
礼拝堂を出た後、愛美は呆れたように言った。
「玲奈ったら居眠り多過ぎー。毎回じゃない?」
「興味ないからかな? 聖書にも神父様にも。あ、でも――…」
「もったいない! 一度ちゃんと聞いてみなよ。ほんとこんなカトリック系学園に入学しといて興味ないなんて」
愛美の眉間にシワがよっていた。
「じゃあ今度聞いてみようかな」
そう答えると、愛美の眉間のシワがパッと伸びた。
「うんうん。それがいいよ」
校内で流れるのは賛美歌ばかり。外出禁止。携帯電話禁止。テレビもネットも禁止。
この全寮制の学園に通う子は大きく分けて2種類に分かれる。
愛美みたいな純粋なクリスチャンか、あたしみたいに親がガチガチに厳しい家庭の子供。
「玲奈? どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
愛美の手を繋ぎなおす。
「玲奈もったいないよー。玲奈は絶対生まれつき神様の御加護があるよ。だってそのアザ――…」
ジロっと見ると愛美が口を閉じた。
あたしは自分のアザが嫌い。
神様も嫌い。礼拝堂も嫌い。
でも――…神父様の声は嫌いじゃない。
掠れそうで掠れてない。
「天堂さん。篠宮さん」
この声。
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