1、消失学園

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「おい!」 多々良に声をかけられてハッとした。 「しっかりしろよ」 「え?」 そこは礼拝堂の2階。目の前には心配そうな顔をした多々良がいた。 恐る恐る制服の左腕をめくる。 そこにはくっきりと青い痣があった。さっきの女の人と同じ場所に。 「なにこれ……朝はこんなの無かった! なにこれ」 多々良があたしを抱きしめた。 「大丈夫。落ち着いて」 男の人は怖いはずなのに、多々良に触れられると不思議と気分が落ち着いた。 「あたしは……なんなの?」 多々良は言った。 「篠宮玲奈だよ。今夜が終われば夢から覚める。気をしっかり保って」 「なにそれ。ここは、この学園は……」 多々良はあたしの背を優しく撫でた。 「この学園は現実じゃない。 篠宮玲奈の、 お前の心の中にあるものだ」 多々良は続けて言った。 「みんなを消してたのはお前だよ」
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