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2013年。
あたしは衝動的に2階の窓から飛び降りた。
もちろん2階から落ちたくらいで死ぬはずがない。ブロックに肩をぶつけて骨折しただけだった。
病院に運ばれたけど、軽い怪我だったからすぐに家に帰らされた。
家に帰ってから、思い切り正治さんにぶたれた。
「どこに行こうとしてたんだ! 男に会いに行こうとしたのか!?」
正治さんは存在しない男の影に怯えている。1階の窓を全部開けられないようにして、玄関のドアには外から鍵がつけられた。
この人はあたしのことなんて何もわかっていない。わかろうともしない。傲慢で臆病。
男なんて大嫌い。
最近あたしは意識を閉じることができるようになった。心の中のシャッターを下ろすと、何も聞こえなくなる。痛みも鈍くなる。
自分の身体が横に飛んで、初めて殴られたことに気がついた。
すごい剣幕で何かわめいているけど、あたしには届かない。
まるでサイレント映画を見ているみたいだ。
あたしは目を閉じて空想にひたる。
白い校舎。白い制服。学園に通っていた頃のこと。
お腹を思い切り蹴られて少し意識が戻ってしまった。
違う。こんなの現実じゃない。
あたしはまた意識を閉じて、学生時代に思いをはせた。
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