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「コラ」
多々良があたしの頭を軽くチョップした。
「俺は部外者だって言っただろ。お前の妄想の産物じゃないよ。実在の人間だ」
若いゲイの神父様。
「1番現実離れしてるのに……」
「どういう意味だよ」
多々良が笑う。あたしは聞いた。
「ねえ。じゃあ目が覚めても会えるってことだよね?」
「俺の気が向けばな」
「意地悪!」
多々良の腕に身を預けた。
気がつけば窓の外はまっ暗闇になっていた。
「……もうこんなに暗くなってる」
多々良は言った。
「ここでの時間の流れは普通と違う。それだけお前の精神が現実に近づいたってことだよ」
多々良の服をぎゅっと握り締めた。多々良は言った。
「起きたら戦いが始まる。お前の自由と権利をかけた戦いだ」
「なんだか壮大ね」
「当たり前だろ。人一人の人生がかかってるんだ。諦めそうになったら思い出せ」
「あなたのこと?」
「違う。自分の望みを」
あたしの望み。友だちとはしゃいだり、楽しく食事したり。
恋がしたい。恋も知らずに結婚してしまった。
「やりなおせるかな……」
溢れた涙は多々良が優しくすくってくれた。
戻りたかった。
真っ白だった学生時代に。
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