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激しい眠気が急にあたしを襲った。少し気を抜いたら意識をもっていかれそうになる。
「やだ……! 怖い!」
あたしは多々良の手をぎゅっと握り締めた。
「落ち着け。大丈夫だから」
多々良があたしの手を握り返す。あたしは消える前に、と多々良に矢継ぎ早に質問した。
「なんであなたはあたしの夢の中にいたの? あなた何なの? 」
多々良は少し躊躇いがちに言った。
「お前の首にある十字架のアザさあ、俺の元恋人と同じなんだよ」
「どういうこと? 元恋人って……」
「“あきら”。知ってるだろ。お前と同じアザを持ってた男」
「……ウソ!計算が合わな――…」
喋ってる途中でいきなり唇をふさがれた。驚いたけど、多々良の唇は全然不快じゃなかった。
そのまま目を閉じて身を任せた。
優しくて愛しくて涙が出た。
唇を離した多々良は気恥ずかしそうに目をそらした。
「なにするのよ……ゲイのくせに」
うっかり心臓が高鳴ったのが悔しい。多々良は言った。
「ゲイだからいいんだろ。純粋な友情が築ける。友情のキスだよ」
「ばかじゃないの……」
多々良が耳元に口をよせて小さな声でボソッと言った。
「……つ…………て……よか……た」
その言葉を耳にしたのを最後に、あたしの意識はするすると何かに引っ張られるように、上に吊り上げられていった。
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