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夜、寮の食堂で夕食を取りながら愛美に『神父様の喫煙』のことを話した。
(嫌いになっちゃえ)
「うっそー。見る目変わるねー」
「でしょ。もーびっくりしちゃったー。感じもいつもと違ったしー。キャラ作ってるんじゃない?」
「素敵」
「へ?」
びっくりしてつまんだコロッケを落としてしまった。
「私も見てみたかったー! 神父様の意外な一面。ギャップだよね」
「……冗談でしょ」
「冗談じゃないよっ。凄い真面目だと思ってたのにそんな一面あったなんてドキドキしちゃうよー」
愛美の瞳は昼間よりキラキラしていた。
言わなきゃよかった。あたしが少し後悔していると、愛美はさらに言った。
「アタックしちゃおっかなー」
「……いいんじゃない?」
別にすればいい。むしろしちゃえ。それで早く忘れたらいい。
接する機会が増えたら、きっと思ってたより大したことない男だって気づく。
――…夢から覚めるんだ。
あたしは愛美に言った。
「応援するよ」
ぱぁっと愛美は笑顔になる。
「うっそー! ありがとう。じゃあ私、さっそく明日早起きして神父様に話しかけに行っちゃおっかな。玲奈も行く?」
「……行かない。寝てたい」
「もー。つまんなーい。じゃあ1人で行ってくるね。また報告するから聞いてよね」
「はいはい」
あたしが投げやりに返事をすると、愛美が「聞く気ないじゃんー」と笑って、トレーを持って立ち上がった。
「愛美、もう行くの? 全然食べてないじゃん」
トレーの上にはまだたくさんご飯が残っていた。愛美がお腹をさすりながら言った。
「あー。なんかねー昼くらいからずっと胃のあたりが痛いの。しつっこいの。だから食欲なくてさ」
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