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「お前は俺がいないと生きていけないだろ! なんの取り柄もない。俺がお金を稼いでるから生活できるんだ!」
帰ってきてすぐ正治さんはあたしにまくし立ててきた。結婚後うんざりするほど聞かされ続けた言葉。つい返事が適当になってしまった。
「わかってる」
「わかってるってなんだ! 馬鹿にしてんのか!」
正治さんがあたしを椅子ごと突き飛ばす。
また始まった。こういう時の彼に下手に抵抗したら長引く。
あたしは顔を守ってじっと丸くなって耐えた。
そして心を遠くに持っていった。
大体ちょっとすれば気がすむのに、あの日は違った。正治さんの暴力はどんどんエスカレートしていった。
お酒のせいだ。
「正治さ……もうやめて……!」
「うるさい! お前のせいだ。お前が俺を変えた。お前が俺を殴らせるんだ!」
正治さんは泣きながらあたしを蹴っている。支離滅裂で言っている意味がわからなかった。
腕を思い切り踏まれて骨が折れた音がした。鋭い痛みと共に、あたしは意識を失った。
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