75人が本棚に入れています
本棚に追加
「代わってもらっていーの?」
「いーのよ!」
藤田さんがまくしたてるように言った。
「篠宮さんは真っ直ぐ寮に帰って! 来ないでよね。私が啓介さんと掃除するから――…」
「けいすけさん?」
聞き返すと、藤田さんはハッとしたように口を押えた。
藤田さんの頬が赤く染まる。
「な、なんでもない! ほら、3限始まるから前向いてなさいよ! でもさっき私が名前で呼んでたこと、絶対に誰にも言ったらダメだからね! 神父様にもよ、絶対よ」
藤田さんは顔を真っ赤にしたまま言った。
「別に好きとかじゃないんだからね!」
「……ふっ……」
藤田さんの可愛い一面に笑ってしまった。
「何笑ってるのよ!」
「笑ってないって。代わってくれてありがとね」
藤田さんとは気が合わないと思って距離を置いていたけれど、喋ってみたら案外楽しいかもしれない。
明日また藤田さんに話しかけて(からかって)みよう。
真っ直ぐ寮に帰ったあたしは、自室のベッドにダイブした。夕食まで時間があるしひと眠りしよう。
なんだかすごく眠い。
うつぶせで枕に顔を埋めた。
そのまま枕の下に何気なく手を突っ込んだ。
「なにこれ」
何か固い紙に指先に当たった。
不思議に思って引っ張り出すと、出てきたのは1冊のノートだった。
ノートの表紙には『愛美・玲奈交換ノート』と書いてあった。
【愛美】
知らない女の子との交換ノート。こんなノート知らない。背筋が寒くなった。
「愛美って……だれ?」
最初のコメントを投稿しよう!