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ノートの最初のページをめくる。
『また玲奈と一緒のクラスだねー! これからもずっと友達でいようね。とか面と向かって言うのは恥ずかしいから――…』
知らない文字。こんな丸っこいのあたしの字じゃない。しかしその次のページの文はあたしの字だった。
『愛美ともしクラスが離れても、寮の部屋は隣同士だからいつでも会えるんだけどね (笑) でも一緒で嬉しいな♪』
「――となり?」
ノートから顔を上げたあたしは、部屋の壁を見た。白い壁の向こうはシンと静まり返っている。あたしの部屋は角部屋。隣の部屋と言うと1つしかない。壁に耳をぺったりとくっつけた。何も聞こえない。
あたしは廊下に出て、隣の部屋の前に来た。少し迷った後、軽くノックを数回した。
「あの。……愛美、ちゃん?」
ノートにあった名前を呼んで見たけれど、返事はなかった。試しにドアノブをそっと握ってみた。何の抵抗もなくドアノブは回せた。軽く押すと、ギギ、と音を立ててドアが開いた。
部屋の中は空っぽだった。
ドアの横の電気をつける。そこには備え付けのベッドと飾り棚以外、何もなかった。ゴミ1つ落ちていない。
「空室。だったよねえ。ずっと」
そう。この部屋はずっと空室だった。
「悪戯かな……」
そう呟き、あたしは自分の部屋に戻った。ベッドに座ってノートをパラパラとめくっていく。一番新しいページを開いた。
『明日の朝は神父様に突撃ー。不意打ちで押しかけてタバコ目撃しちゃったらどうしよー(笑) 胸キュンな展開を期待あれ』
ノートの字を指でなぞる。
「この字もあたしじゃない」
喫煙の話は誰にも言っていないはず。なのになんでこの子は知ってるんだろう。
気味が悪くなって、ノートを床に放った。
愛美なんて子、知らない。でも妙に耳馴染みのいい名前が心に引っかかる。
あたしはまたノートを拾い上げて、最後のページを読み返した。
最後のページの日付は昨日。【愛美】という子と神父様は今朝に会っていたかもしれない。
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