第1章

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いつもいつも、 同じ揺らめきを見つめている。 海の底、わたしはただ一人で 揺らめきを見つめているだけ。 声を出すこともできない、 無力なわたしだから。 気づいたらここに一人だったから なにも感情はない。 だけど何でだろう。 揺らめきの中に見える何かの影に、いつも期待をしてしまうんだ。 それを見つけたとき、 胸が詰まるような、喉が乾くような感じがする。 とても、苦しい。 その正体はわからない。 でも、何か期待をしている自分がいる。 いつか、無力な自分を あの影が連れ出してくれるって。 いつかーーいつか。 無力なわたしはそれを祈ることしか出来ない。 祈ることしか許されない。 出そうとした声は、泡となって空に吸い込まれた。
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