第1章 俺と彼女の出会い

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愛結(アユ) どうして、死んだんだ。喧嘩すらした事も無く、いつも向こうから優しく接してくれていた。 近所からは、仲良き双子として評判も良い。なのに何で姉さんとも呼べないままにこの世を去ったのか、責めて一度だけ呼ばせて欲しい。 憎い、ただ赦せない。犯人の事は聞かされていない、きっと愛結の命を奪った奴はどうしようも無いくず野郎だ。 何故、幼い内に生きている喜びを半分すら知らぬままに死ななければならなかったのか。 痛かったと思う、先程のテクテクの言葉を思い出し涙が頬を伝った。 のうのうと生き、いや。地獄にでも落ちている、それとも一生眠ったままの姿なのか。 犯人を赦せない、そんな想いは怒りとなって込み上げ。積もりに積もって行く、ふと後ろの窓を見詰めた。 ガタンゴトンッと揺れる電車内、周りには会社員や俺のような学生が乗っていた。 「孔、大丈夫?」 「あっ、いや。平気だよ、一つ頼んで良いか?」 唐突に、彼女にお願いをしてみる。するとテクテクは何と笑顔で訊いてきた、途端に俺は唾を飲む。 そして、小声で彼女に耳打ちした。瞬時に眼を見開く彼女は、暫し沈黙の後静かに頷く。 嬉しかった、複雑な気持ちでもあったが単純に今は喜びたい。 「愛結、其れが私の偽名?」 「あぁ、気に入らないよな。死んだ姉の名前何て……」 けれど、彼女と姉は似ている。 ゆっくりと、瞬きをし。静かに何かの歌を口ずさむ少女は、凄く幻想的で何処か姉と重ね合わせていたんだ。 その歌い方でさえ、愛おしい。不思議な魔法に掛かったように、俺は彼女に対し奇妙な想い抱く。 帰ったら、家族にも話さないとな。半ば楽しみに笑みを浮かべ、俺は彼女を見詰めた。 何時からだろう、ある特殊な考え方。発想が生まれて、気が付いた時には自分に嫌悪感を覚える。 電車は東京駅で止まる、素早く反応し。愛結を連れてホームに降りた、だがそんな時。 非常口の周辺に、蠢くナニかが見えた。彼女を近付けてはいけない、そう思い直ぐ様手を繋ぐ。 ギイィッ、軋む音を立てて扉が開く。中から若い男性が姿を現すと、蠢くナニかに覆い被さる。 ポー、ポーと鳴く何羽もの罠に掛かった鳩。其れを無表情のままに、何処からか持って来た大き目の石で何度も殴る。 殴る、殴る。其れを繰り返し男は笑いながら無残なその死骸を何処かに運んで行く、俺はそんな光景は見慣れていた。そして、一羽だけ生き残った鳩を掴む。
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