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まだ、辛うじて生きている其れの首を俺は締め付けた。鳩は苦し気に鳴く、それが可笑しくて笑えた。
無様、そして人間に危害を加えた自らの罪だ。最後に弱りきった鳩を壁に叩き付け、血を手に塗った。
弱く儚い、実に面白味のある玩具だ。家族も喜ぶ事だろう、最も俺が楽しければ良いだけか。
さっきの奴は、あれを売る気なのだろう。実際他国では食品として分類されている、腹を壊しそうだ。
そして、罪には問われない。何故なら保護する迄に至らないから、だから尚更好都合だった。
俺は動かない死骸に飽き、愛結の方に眼を向ける。途端に肩を震わし、呆然とする彼女。
「あはははははは」
「何で、こんな事をするの……酷いよ!」
何故、そう訊かれれば答え何て安易に想像つく。俺は笑みを含めながら、どうせ死ぬならもっと痛め付けて殺したかったと言って返答する。
其れに、家族にも見せたい。恐怖するその顔を、そして怯えて欲しい。
血の気の引いた、怯えきった姿を見たい。此処は俺のテリトリーだ、何をしても平気なのには確信がある。
家族の少女達に、この光景を見せたい。けど其れをすればあいつらは消える、そして逃げてしまう。
もう、動かない死骸を俺は冷たく見下ろす。そして少女の方に向き直し、ハッとした。
我に返った時には、愛結は小刻みに震えている。幽霊の筈なのに、其れは自身以外を哀れむ姿。
「ごめん、違うんだ。何か最近急にこうなって……可笑しいよな」
「さっきの人、あれも何だか可笑しかったね」
彼女は、無表情のままに俺を抱きしめる。幽霊だからか温もりは無い、けれど不思議と心地が良かった。
幼い記憶が甦る、誰かにこうして励まされていた自分がふと脳裏に過った。
あれは姉さん、そしてまだ幼少児の俺が居る。戻せるものなら、どうか時を戻して欲しい。
愛結姉が死ぬ前に、そうしたら迷わずその時間が過ぎる迄家で過ごしていたのに。
伸ばす手は、幻想を掴む事無く走馬灯のような幻をすり抜ける。
「うわあああああああ」
「……大丈夫、お姉ちゃんが居るからね」
気のせいだ、愛結は死んだんだから。そんな優しい声が聞こえる何て耳がどうかしたに違いない、俺は全てを否定する。
ナニかが見えた、今度は音容な雰囲気の少女。間違い無く目の前に居るのは、愛結に違い無かった。
思わず眼を見開く、そしてその名前を呟くと少女は何も言わずに今度は頭を撫でる。今は二人だけの空間
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