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「愛結、何で……」
「大丈夫ですよ、私が居ます。でもその前に……」
少女は、微笑する。そして俺の眼を見詰め、強い眼光で睨み付けた。
恐ろしく、不気味な雰囲気に思わず彼女から離れ。飛び退くようにして、壁に背を着ける。
細く、人間とは思えない手を伸ばし。其れを頬に触れさせると、つーっと指先が首元にまで下がって行く。
――そして、耳元で少女は囁く。お前のせいだと、姉だって自分が殺めたんだ。そう彼女は言って、俺から距離を取った。
「あんたが、試した結果よ。忘れたの?愛結は事故で死んだ訳無い、あの場所で……」
「言うな、言うなっ。あああああ!」
狂い叫び、壁に何度も拳を叩き付ける。その度に手は赤く腫れあがっていく、少女は其れを哀れむ眼で見ていた。
違うと、全てを何もかもを否定したい。
けど、決して赦される事の無い罪はそう簡単に消える訳が無く。
ハネラレタ、姉さんをただ視ている事しか出来なかった。
手を伸ばしもせず、我が身が可愛いが為にかたわれを見棄てた。
カンカンカンッ、そうリズムを刻む踏切の音を無言のままに聞いていたんだ。
目の前は、一面の赤い水溜まりが出来ていた。足元にまで染み込むナニかが、恐ろしくて俺はその場から逃げた。
夏場の肝試し、幼い俺等が二人で興味本意に行って。その有り様が此れだ、愛結はピクリとも動かない。
それ以来、踏切を避けるようになった。
「思い、出した……愛結はハネラレタ?」
「そう、だから私が罪を伝える為に。同じ死に方をした愛結を哀れみ、君の元に現れたの」
「教えてくれ、あいつは。愛結はどうなったんだ?」
死に方をした、その言葉で大抵の覚悟は出来ていたのに。またしても脳が拒絶する、どうしてなのかただ切ない。
彼女は、フッと笑う。そして改札口の方を指差す、その直ぐ先には病院が有った。
彼女は、最期に行きなさいと言い消えた。生きなさいとも聞こえ、俺は涙を眼に溜めて笑顔を浮かべる。
そして、駅のホームを抜けてズイガを使い改札口を抜けた。病院の前に一人の女の子が立っている、彼女の姿に思わず息を飲む。
ゴクリ、喉を鳴らす。そうして渇きを潤し、俺は躊躇うも彼女に声を掛けた。
漸く会えたのに、痛々しい姿に罪悪感を覚え中途で立ち止まっては心臓が激しく脈打つ。
車椅子に座り、太陽を見上げている女の子は自分とよく似ていた。まるで鏡を視ている、そんな感覚に襲われては緊張した。
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