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配達を続けて10日。
相変わらず数に変動はありつつも、注文は途切れる事は無く入った。
種類にバリエーションもあるからだろう。
A社はスムーズに。B社では10分間嫌みをきき、お金をぶつけられそれを拾うというのが日課となった。
「あの、気にしなくていいからね。」
いつもの人が休みだったのだろう。女性社員が苦笑いで気に掛けてきた。
気にしなくていい。
それはきっと、嫌みを言われ、お金を投げつけられる行動だろう。
「ありがとうございます。」
平和にお金を手渡しされた。
やはり自分は感情が鈍っているのだろう。嫌みを言われても、こうして気遣われても、何とも思わないのだから。
会社を出て、空を見上げれば今日は晴天。
こういう空や景色は綺麗だと思う。
いや、そういうものでなければ、綺麗だと思う感情を持ち合わせていない。
「めぐみさん。」
ぼんやり空を眺めていると、女性から名前を呼ばれ振り向くと、そこには隣の住人だった。
なぜ?
疑問が頭を浮かぶが、彼女は気にせずニコッと微笑んできた。
それを見て、
あ、綺麗だな。
と、空をみた時と同じことをおもった。
「カフェで働いてるんでしょ?また会ったら教えて貰おうと思ってたの。」
「今から帰りますが、一緒に行きますか?」
「ほんと?ラッキー!」
人懐っこい人なのだろう。
そう納得しながら、楽しそうに後をついて歩く彼女を店へ案内した。
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