st.1 はじまり

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「あら?珍しい、ナンパしたの?」 扉を開け、エスコートして店へ女性を通す姿を見て、忍は驚いたように話しかけた。 「お客様です。」 「いらっしゃいませー!」 聡美が笑顔でカウンターへ通した。 サロンをつけ、水を運びメニューを渡すと、もう決まっていたのか、子供のようにキラキラした目で、 「クラブハウスサンドとメロンソーダで!」 そう言い切った。 「かしこまりました。」 ちらっと、忍に目配せすれば、笑いを堪えるように顔を背け、こくこくと頷いていた。 まだピーク前という事もあり、和やかに忍のトークが始まる。 「めぐみとは知り合いで?」 「あ、お隣さんなんです。マンションの。」 「へー、そうなのー。」 聞いてないわよ?と、いう目を笑顔で向ける忍。 「私の営業先に配達してて、ここの評判を聞いたんです。次会ったら絶対教えて貰おうって思って。会えて良かったです。」 人懐っこい笑みでニコニコ話す印象が良かったのか、いつもはめぐみの運ぶ担当なのに、聡美本人が運んでいった。 そして、極上のスマイルで、 「めぐみ、無愛想だけど、怖がらなくていいからね?仲良くしてあげて。」 「はい!」 そして、こちらも極上スマイルで返事をする彼女。 この人、本気だ。 本能的にめぐみはそう察した。 「おいしー!」 そして、それはそれは美味しそうにクラブハウスサンドを食し、周りのお客様の食欲まで刺激させた。 「また来てね。あなたがいると、売り上げ上がりそうよ。」 「嬉しいです!本当に上がったら、サービスしてくださいね。」 本当にコミュニケーション能力が高い人だなと、関心した言葉のキャッチボールだった。
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