st.1 はじまり

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「良い子じゃない、あの子。」 「そうですね。」 「名前は?」 「・・・そう言えば、知りません。」 「相手は知ってたのに?」 「名乗って挨拶したので。」 「めぐみから?」 「いえ、あの人から。」 ため息をつく2人。 食器を洗いながら何故ため息をつかれるか疑問に思ったが、めぐみは考えはしなかった。 そこまで、思考回路がつながらなかったのだ。 「これも縁だし、友達になったら?」 「友達?」 そのキーワードに、思わず怪訝な声がでた。 思いもよらない自分の反応に、一瞬戸惑った。 何故か、汚されたように思えてしまったのだ。 「いえ、必要ありませんから。」 かき消すようにいつものように否定したが、伊達に長く過ごした人達ではない。 異変に気付かないわけがなかった。 「まだまだ子供ね。」 「親としては可愛いけどねー。」 「大きな子供過ぎて、手が焼けるわ。」 2人のやり取りに特に口を挟むこともなく、淡々と仕事を終わらせるめぐみ。 そんなめぐみを、聡美はテーブルに肘をついてニコニコと見つめた。 「初めて会った時からしたら、随分マイルドにはなったよね、めぐみ。」 「そう、ですかね。」 「そうよー。」 酷かったよねー。と、大袈裟に聡美が忍に問いかけると、うんうんと渋い顔で頷かれた。
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