90人が本棚に入れています
本棚に追加
それは少し暑苦しい夜の事だった。
網戸にし、いつものように窓側で眠っていると、さっさっという微かな物音に目を覚ました。
こういう気配のようなものは、とても敏感ですぐ目が覚めてしまう。
「・・・・・。」
キラリと光る小さな光に、思わず息を殺した。
が、すぐにすぅーと吐くこととなる。
それは、猫だと気付いたからだった。
グレーの縞々で、じっと網戸ごしにこちらを見つめていた。
ここは6階。さすがによじ登ってきたという事は無いだろう。現在地が角部屋ということは、隣からきたに違いない。
「君は、誰?」
「にゅー。」
話しかければ、小さく鳴き網戸をかりかりと引っ掻きだした。どうやら開けろといってるらしい。
からから、と空けると、その猫はまるで我が家のように遠慮なしにあがり、毛布を足踏みしだした。
「足、拭いてる?」
しかし、前足だけ?
不思議そうに見れば、ふぅと毛布の上で丸まった。
「おいおい、ここで寝るの?」
完全にこちらを無視して静かにお腹が上下させる小さなお客様は、まったく気にしていないようだった。
時刻は深夜2時。
今からチャイムをならして飼い主を探すよりもいいだろうとそのままにしてみた。
微かな呼吸音が、やけに心地よく感じた。
動物を飼ったことはないが、ペットがよく癒やしと言われる理由がわかる。
人差し指でそろっと頭を撫でてみれば、目も開けず少し顎をあげた。
少しだけ、少しだけ、
自分の口角が上がったことに、本人が気付くことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!