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朝6時
携帯の目覚まし時計がなる前に、ぺしぺしと柔らかいものに叩かれる感触に目が覚めた。
「あぁ、おはよう・・。」
そういえば、こいついたな。
夜中に突然訪れた猫を見つめると、入ってきた時のように網戸を引っ掻きだした。
「帰る?」
まるでそう言っているようだった。
そろっと網戸を開けてみれば、身軽に手摺りへ飛び乗りひょいひょいと姿を消した。
「頭のいい猫だな。」
感心しながらその姿を見つめ、先程まで眠っていたその子の毛布の跡をみつめる。
たった数時間なのに、何故こんなにも心がざわつくのだろう。
「あれ?網戸閉め忘れてたかな?しま、あけた?」
網戸を締めようとした時だった。隣からそんな声が聞こえたのは。
洗濯物を干すのか、ガチャガチャとハンガーの音がする。
どうやら、あの猫の飼い主は隣の住人だったらしい。
どうするか迷ったが、もしいない事に騒ぎ出しても迷惑だと思い、ベランダに出て、防火扉をノックした。
「あの、おはようございます。」
「ひゃ!?お、おはようございます。」
突然ノックされ、声を掛けられたのが相当驚いたのだろう。変な悲鳴が一瞬だけ聞こえた。
ひょこっと防火扉の近くから顔をだせば、恥ずかしそうにはにかむ彼女がいた。
「あの、しましまの猫、飼ってます?」
「あ、は、はい。」
「うちに深夜きてて、泊まっていったんです。だから、開いてたのかも、網戸。」
「え?え?す、すみません。」
まさか?!と言った顔で室内にいるらしい猫とめぐみを交互に見る彼女。
そのリアクションが、どこか聡美とかぶり、不思議と緊張感が和らいだ。
「いえ、別に。ただ心配しないようにと思って。それだけです。」
まだ仕事まで時間もあり、めぐみは再び毛布にくるまった。
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