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それからしまと呼ばれるその猫は、頻繁に夜に現れるようになった。
何故ここに来るのかも分からなかったが、よほど寝床として気に入ったらしい。
開けろと合図され、開ければ毛布を踏み丸まって眠り、朝になれば時間通りに起こし、自分の部屋に帰る。
その自由奔放で身勝手な生き物の訪問を待ってる自分も生まれ、あのメモ紙を見つめる時間が増えた。
不思議としまと添い寝した後は気分がいい。
しかし、帰られると押し込んでいたはずの人恋しさが頭をだし、心を揺さぶってくるのだ。
「やっぱり、動物なんて飼うもんじゃないな。」
かと言って、追い返す事も出来ないが。
やれやれと窓際にもたれながら、休日をぼんやり過ごしていると、突然チャイムが響いた。
しかし、それはオートロックの入り口ではなく、玄関からだった。
相手を確認すれば、それは隣の女性で。
一瞬だけ出るのを戸惑ったが、猫の件もあると心を決め、扉をあけた。
「はい。」
「あの、こんにちは。」
「こんにちは。あのめぐみさん、良かったらお昼一緒にどうですか?」
「・・・・・。」
「あ、もう済ませちゃったかな?」
「いえ・・。」
理解出来なかっただけだった。
何故、私と彼女が一緒に食事をしなければいけないのか。
これだけが頭を巡ったが、聡美の言葉を思い出した。
「仲良くしてあげて。」
そういう事だろう。
「近くに美味しい店があるの。いこ?」
「・・・はい。」
オーナーの顔をたてる事も考えたら、断りきれなかった。
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