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「和食とパスタ、どっちがいい?」
「どちらでも・・。」
「んー、じゃあパン派?ライス派?」
「ライス派・・ですかね。」
「じゃ、和食いこー!」
楽しそうに前を歩く女性。
「あの、名前きいていいですか?」
「え?誰の?」
「あなたの、です。」
そこでピタッと体を硬直させ、笑顔のまま時が止まる彼女。
そして、距離をつめめぐみを見上げた。
そういえば、この人は身長が低い。近くにいれば、頭半分ほど見下げなければいけない。
「ごめんなさい!私、すっかり自己紹介してると思ってた!!」
あわあわと慌て出す彼女は、目の前で手を合わせ謝ってきた。
「私、沙樹っていうの。25才よ!」
「めぐみです。今年で、21になります。」
「若いのに、落ち着いてるね!私と同い年くらいかと思った!」
むしろ、あなたの年齢に驚きです。
そう思いながらも、口にはでなかった。
昔から、思ったことを口にする事は苦手だった。
彼女、沙樹という女性がおすすめの定食を注文し、また美味しそうに食べ始める。
食事中に話すのは得意でないめぐみは、沙樹の話を頷くのが精一杯のコミュニケーションだった。
「めぐみちゃんって、食べ方綺麗だねー。」
「そう、ですか?」
「うん。」
「沙樹さんは、美味しそうに食べますね。」
「えー、それって私が食いしん坊みたい。」
よく笑う人だな。
彼女に対して2度目に感じた感想だった。
自分とは、真逆の人間。
「人間らしくて、いいじゃないですか。」
「え?」
意味をかく疑問なのか、聞き取れなかったのか。
彼女の疑問には答える事は出来なかったが、黙々とご飯を食べた。
しかし、彼女は気にする事も無く、色々と質問を投げかけてきた。
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