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彼女の問いにめぐみは1度お茶を飲んでから答えた。
ぽんぽんと飛び出す会話に、時々答えは詰まったが、彼女は気にせず次の話題にかえる。
食事の1時間で、1ヶ月以上の言葉を発した気分だった。
「ねぇ、この後も時間ある?」
「はい。仕事は、休みなので。」
「じゃ、うちに来ない?しまもめぐみちゃんの事気に入ってるみたいだし。」
この警戒心のなさは、危ないんじゃないだろうか。
柄にもなく心配した。
「大丈夫!とって食べたりしないから!」
心配なのは、そこじゃないです。
目を細めてそう思ったが、これは言っても無駄なのかもしれない。
めぐみはその時、無意識に他人に関心が向いている事に気付いていなかった。
他人の家にあがるのは、経験も少ないからかいつも緊張する。
が、それもベッドで寛ぐしまを見て、ほぐれていった。
「お前はいつも寝てるな。」
ツンツンとおでこを指でつつくと、不満そうに睨まれた。
家では強気なのかと思ったが、指先で撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「しま人見知り激しいのに。相当気に入られたね。」
年下と分かったからか、フランクな口調に変わる彼女。
「お茶と珈琲、どっちがいい?」
「お茶を、いいですか。」
「はぁい。」
する事もなく、床に座るとしまがあぐらの上に丸くなった。
おそるおそる
躊躇しながらも、手のひらで頭を撫でてみた。
ふわっとした感触と温かい体温が伝わってくる。
気持ちいい。
やはり、家が一番落ち着くのだろう。
欠伸をし、リラックスするしまが羨ましく感じた。
すると、ふわっと髪の毛に何かの感触がのった。
見上げれば、優しい笑みで自分の頭を撫でる彼女。
なでなでと、優しく、優しく撫でられ、前髪を少しだけかきあげられた。
視線が合い、見つめ合うその一瞬が、とても長く感じた。
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